がんカフェはなのねがん経験者の思いに耳を傾け、ともに語り合う

新潟でいきいきと暮らすための
情報がたくさん

2022.06.10

カテゴリー医療・介護

もしもあなたにがんが見つかったら。もしも家族や友人にがんが見つかったら。
そんなときに不安や悩み、疑問を語り合うことができる場所があります。新潟市で開かれている「がんカフェ　はなのね」を訪ねました。

誰にも言えない思いがある

長寿の時代、ふたりにひとりががんにかかると言われています。がんが見つかったとき、治療については病院で行います。しかし治療にともなう不安や疑問、辛さについてはどうでしょうか。身内にさえ話せない思いを抱え、悩むがん経験者や家族は少なくないといいます。そんな人たちが集い、それぞれの思いに耳を傾け、ともに語り合う場所が「がんカフェはなのね」です。
拠点としているのは、新潟市中央区の住宅街にある「まちなかのとらうべ」。「とらうべ」とはおなかの中の赤ちゃんの心音を確認するための「トラウベ聴診器」のことで、ここがかつて産婦人科医院だったことに由来します。

揺れる気持ちを受け止める場所

出迎えてくれたのは共同代表の一人である遠藤ゆき子さんと、メンバーでビューティタッチセラピストの竹谷(たけや)茂子さん。パッと目を引くそろいのオレンジ色のTシャツには、花が開いていくシルエットがあしらわれていました。そこには「誰もが自分らしく美しく咲く“はなのね” を持っている。しっかりと根をはって生きていってほしい」という願いが込められています。
自身もがんの経験者という遠藤代表は「がんになったことで揺れる気持ちを、どうすればいいのか悩みました。病院とは違う場所で、自分自身を見つめてゆっくり話せるところがあったらいいのにと思っていました」と話します。そんなとき、都内にがんの患者や家族を支援する施設「マギーズ東京」がオープン。遠藤代表は同じ思いを持つ人たちとマギーズ東京を視察し、2018年、新潟ならではの支援方法をと「がんカフェ　はなのね」を立ち上げました。

「みんなのはなのね」　道材株式会社ショールーム

励まし励まされることで乗り越える力が生まれる

「はなのね」には、闘病中の人とその家族だけでなく、治癒後または寛解した人や、医師、看護師、薬剤師、セラピストなど様々な業種の方がボランティアとして参加しています。ゆったりとした雰囲気の中でお茶を飲みながら、経験者や専門家と話ができることが大きな特徴です。
「抗がん剤を始めるのだけれど、ウィッグはどんなものをいくつ用意すればいいの？」
「手術のあと、どんなふうに栄養の管理をすればいいの？」
「病院でタンパク質をいっぱい摂るように言われたけれど、そんなに食べられない」
「これからどうなってしまうのか不安でたまらない」
それぞれが抱える問題は様々です。しかし似たような状況に置かれた人同士で語り合うことで、互いに励まし励まされる関係ができ、自らの力で困難を乗り越える力が生まれる例がいくつもあるといいます。
「経験した人ならではの話、生きた情報が得られ、力になるんです」と遠藤代表。

「わたしのはなのね」　まちなかのとらうべ

「わたし」への寄り添い

「はなのね」では、多くの人が集まって自由に話をする「みんなのはなのね」の他に、みんなとは語り合えないような悩みを、スタッフと1対1で話すことのできる「わたしのはなのね」を開催しています。これはがんと関わる人の状況は十人十色であることを踏まえ、固有の問題にも対応したいとの考えから始まったものです。
「1対1で話ができるとは言いますが、気分がすぐれなければ何も話さなくてもかまわないんです。家族から離れてひとりきりで考えたいときもあるでしょうし、室内で読書をしたり、ピアノを弾いたりすることもできます」
「はなのね」においては、本名を名乗る必要はありません。その日限りの名前で過ごすことにより、プライバシーを守ることができます。だからこそ本音で話せることもあるかもしれません。

勇気を出して「はなのね」の扉を開けてほしい

2021年、「はなのね」は第四北越銀行賞を受賞しました。これは新潟県内の社会福祉・災害支援活動において、特に貢献した活動を表彰したものです。
遠藤代表は「私も行ってみようかなと扉を開けるには、勇気がいるかもしれません。でも多くの人が集まってくだされば情報も増え、『私も経験がある。こうやって乗り越えたよ』ということがたくさん出てくると思うのです。参加した皆さんに『あなたは一人ではないですよ』と有意義な情報を持ち帰っていただけるように、いろいろな人の知恵をお借りし、協力をお願いしたいです」と呼びかけました。